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『なぜ科学はストーリーを必要としているのか』 ランディ・オルソン

カテゴリー:ステキな本たち、とか

 

こんばんは☆

さてさて、今日もオススメの本のお話です。

著者は、生物学者からハリウッへ転身をしたオルソン氏。
ハーバード大学で博士号(生物学)を取得後、ニューハンプシャー大学で教授を務め、終身在職権を取得。
その後、大学を辞職し、南カリフォルニア大学映画芸術学部で映画製作を学んだあと、数々の映画の脚本・監督を手掛けた方です。

そのオルソン氏が、世の中の科学者に向けて「ハリウッドに学ぼう!」と提案なさっているのが、この本です。
科学者とハリウッド。
まるで正反対の存在に見えるこの両者、どんなふうにまじりあうのでしょうか???

そして、実はその真髄、科学者だけではなくて、何かを誰かに伝えたい全てのひとに、当てはまっちゃうのです。
なにかのプレゼンでも、学校の発表でも、あるいは単に「自分の話があまり面白くないみたいだ」と思っている人や、「夫が私の話をちゃんと聞いてくれないの!」というひとにだって、お役立ちのお話。
果たして、それはどんな。。。



AAAとABT~ストーリーを語る文章の構造
この本のなかで、オルソン氏が、ひとびとを惹きつける話をするために推奨しているのは、「”物語””ストーリー”を語る」、ということです。
では、なにが”優れた物語”であり、なにが”優れた物語”ではないのか。

まず、オルソン氏が、あまりよろしくない、とするのが、「AAA」構造の文章。
この「A」とは、「and」を指します。
つまり、「AAA」構造の文章は、文が「And」でずっと繋がっていく文章のことです。
日本語に置き換えれば、「それでね」「それでね」という調子で、ずっと連なっていく文章ですね。
言われてみれば、確かにそういう文章はおもしろくない。抑揚がなくて、途中で眠くなりそうですし、あまりにも長ければ「それでどうしたんだっ!」と言いたくもなります。

それに対して、オルソン氏オススメなのが「ABT」構造。
Aは「And」、Bは「But」、Tは「Therefore」です。
「そして」「しかし」「したがって」ですね。
演劇の三幕構成と同じとおっしゃっていますが、日本でいう「起承転結」とも似ているかと思います。
単に「起承転結にしなくちゃ」と考えると小難しいですが、接続詞に「そして」「しかし」「したがって」を使えばよいと考えれば、とっても実用的です♪



物語の構成~ヒーローズジャーニー
では、物語全体の構成は、どのようなものがオススメなのでしょうか。

ここでオルソン氏が取り上げるのが、”ヒーローズジャーニー~英雄の旅”。
コーチングなどでよく用いられる概念です。
主人公が、旅に出て、問題を解決して、帰還する。
『オズの魔法使い』のお話を思い浮かべていただくとわかりやすいですね。
コーチングでは、その旅路をいくつかの段階に分け、どこにあなたはいるのか、これからどうしていくのか、というところを見て、課題解決につなげていきます。

ここで、ちょっと考えてみてください。この構造、わたしたちの周りのいろんなところにあると思いませんか。
そう、ハリウッドのヒット映画もそうだし、ベストセラー小説や、大ヒットアニメや人気ドラマも、この構造でできているものがたっくさんあります。
オルソン氏は、この構造がハリウッドで重要視されるようになったきっかけは、ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』の第1作目にこの構造を応用したことだ、と言っています。そこから、この”ストーリー”は、ハリウッドで多用されるようになったとか。

が、ここでたいせつなのは、”ヒーローズジャーニー”の形式をとることではなくて、その形式で語るに足る内容があること。
まああ、当たり前と言えば当たり前ですが、形式にとらわれ過ぎて、うすっぺらい中身しかなかったら、いくら”ヒーローズジャーニー”であっても、おもしろくもなんともない代物が出来上がってしまうわけです。

この点、オルソン氏は”ヒーローズジャーニー”を12の要素に分けて説明をしていますが、12の要素を埋めることが大事なのではなく、あくまで物語を語ることが目的。
そのために、「物語の深い直観を養うこと」が真のゴールだ、とオルソン氏は言います。
どの要素が重要で、どの要素が重要ではないのか、感覚ひとつでわかるようになりたい、と。
多くのストーリーでは、主人公の危機的な状況が、聞いている人の心をつかむのに、もっとも強力な要素であることが多いそうです。確かにっ!!!
ストーリーのなかの一番の谷、ともいえますね。
一番の谷と、そして対極にある一番の山の部分を重要視して、それらのステージからたくさんの情報を引き出し、たっぷり語る。他の部分は軽く、と緩急をつける。そのタイミングとスピード感を養っていくことがたいせつなんです。



プロットの妙~世界は今も、物語の力で回っている

では、”ヒーローズジャーニー”の形で語られるストーリーを、科学にどのように取り入れれば、大衆が耳を傾けてくれるのか。
ここでも、ハリウッドの助けを借りよう、とオルソン氏は言います。
そこで肝になるのが、”マッキーの三角形”。ハリウッドの偉大なシナリオ講師であるロバート・マッキー氏が考え出した”物語”の分類です。
その3つの分類が
〇反プロット
〇主要プロット
〇ミニプロット です。

反プロットとは、伝統的なストーリーテリングを理解したうえで、それを覆した形態。基本的にそこに物語性はなく、大衆の心に訴えたい場合には重要性は低いです。

注目すべきは、主要プロット。
太古の昔からある形式で、当然のことならが、多くの聴き手・読み手に影響を与えます。主要な映画の核には、必ず主要プロットがあります。
マッキー氏は、主要プロットの主な性質を列挙していますが、そのなかで、大衆の心をつかむのに重要なものが以下の5つ。
①直線的な時系列
②因果関係
③単独の主人公
④積極的な主人公
⑤まとまった結末

たとえば、『オズの魔法使い』は、主要プロットの典型的な例です。
①物語のなかの時間はあちこちに飛ばずに直線的に進み、
②起きる物事にはすべて理由があり
③単独の主人公=ドロシーが
④積極的に行動し、
⑤最後は無事にカンザスへ帰って、幸せに暮らす

という具合ですね。

そして3つ目のミニプロットは、プロットの重要性を最小化したものです。ごく簡単に言えば、主要プロットの特徴をすべて逆転させたもの。
①非直線的な時系列
②少ない因果関係
③複数の主人公
④消極的な主人公
⑤未解決の結末
このタイプの映画は、玄人好みと言いますか、映画批評家に愛されることが多く、芸術的な尊敬を受けながらも、、、興行成績の上位には入ってきません。

聴き手や読み手の心をつかむのに目指すべきは、主要プロットです。
もちろん、反プロットやミニプロットは魅力的な形態ではありますが、玄人向けであり、大衆の心をつかむのには向かないのですね。
自分の話が、反プロットやミニプロットになっていないか。それを見極めて、自分の”物語”を紡いでいきましょう♪




本のなかでは、ここで簡単にご紹介した「ストーリーテリング」の手法たちを、具体的にわかりやすく説明してくださっています。
そして、これらを自在に扱えるようになるためには、どのようなトレーニングが必要かというところまで教えてくださって、至れり尽くせり。
まさに、「科学という分野にストーリーを取り入れて、大衆に親しんでもらうべし」という課題をクリアするための壮大なストーリーを見せてもらっているようです。

ストーリーテリング/物語については、科学だけではなく、様々な分野で、その重要性が強調され続けています。
会社の経営でも、ブランディングでも、店のコンセプト作りでも、取引先へのプレゼンでも、あるいはたぶん、家族や友達とのおしゃべりでも、もしかしたら愛の告白でも。

結局、わたしたちは、どんなかたちにせよ、物語をとおしてしか、自分の周りの世界を認知できないのかもしれません。
そう、世界は今も、物語の力で回っているんです。
だとしたら、せっかくですから、優れた豊かな物語をたくさん紡ぎだして、わたしたちの世界、とびきり豊かにしていきたいものですね。
自分の世界も、自分の周りの世界も♡

 

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